「女子高校生がジャズ!?」というのがそれだけでコピーになるのかどうか…。
というのも、ぼくの高校時代一時期の思い出にはジャズが流れているから。
進学校では高校3年の夏休みは、夏「休み」ではない。
学校に行くかわりに予備校に行くだけ。
そして、学校以上にギスギスした雰囲気のなかで、ぎっしりの「予備校イス」で隣のヤツとひじとひじをぶつけ、受験戦争の火花を散らす――。
…というのは、じつはぼくにとっては空想の世界で。
ぼくはといえば、ほぼ毎日学校のプールに通い、プールの閉まる午後3時からは学校近くの市立図書館の冷房の効いたソファーで惰眠をむさぼり、起きたらちょっと勉強し、帰りに図書館のレコードを借りて帰る――というのが日課だった。
図書館のレコード――ちょうどその時期はレコードから CD への変わり目だったが――は、容赦なくいろんな人が借りるので、当時のヒット曲のものは、傷がひどくてとても聞けるものではなかった。
結果として、いちばんレコードがきれいだったジャンルがジャズだった。
高校生とジャズの出会いなど、所詮そんなものかもしれない。
しかしいざ出会ってしまうと、時代のヒット曲以上につよいインパクトで、高校生を夢中にさせ、とりこにするエネルギー、魔力をもっているのもジャズなのだ。
「ウォーターボーイズ」のヒットがまだ記憶に新しい矢口史靖監督・脚本の本作。
またしても、高校生の友情と成長のエネルギーを爆発させた素敵な作品だ。
じつは、本家ウォーターボーイズの高校がぼくの出身校。
「ウォーターボーイズ」の方は素直に楽しめなかったので、余計のこと新鮮な印象だった。
とくに「いいなぁ」と思ったのが、途中で「ジャズ」をとりあげられるエピソード。
映画の展開として挫折や壁があって前にすすんだほうがもりあがる。
「ウォーターボーイズ」でも、中間発表で大失敗をして、そのくやしさをバネにがんばる姿が描かれていた。
しかし、今作ではやっと音が出るようになって、「せっかく楽しくなってきたのに」、楽器と練習の機会を奪われるくやしさが描かれる。
…あったなぁ、そういうこと。
せっかく自分らしさを輝かせられるような楽しいこと・熱中できることに出会ったのに、それを「まだ高校生なんだから」とか「お金がかかるから」とか「それより勉強しろ」とかいって、奪われてしまうことはままある。
「でも、やりたい」からはじまるますます燃える気持ちが高校生らしさなのかもしれない。
そして、ジャズ。
音楽のハーモニーと友情が重なったときの胸躍る気分が、よく伝わってくる。
とくに管楽器の演奏シーンは、呼吸を共有するので一体感がつよい。
それを女子がやっていると思うと、その一生懸命さがリアルに伝わってくる。
今回も、題材で映画の80%ぐらいを支えている気がする。
演出や脚本がいいのか、題材がいいのか、そのあたりがごちゃごちになって、でも感動できるというつくりが、じつにいやらしく、くやしい(←ほめ言葉なんだろうか?)。
山形でのロケによる雪景色、方言をそのままとりいれた台詞回しなども素朴でよかった。
やっぱりジャズはいいぞ~。
なんか男子シンクロがあちこちの高校に飛び火しているようだが、ジャズはいいぞー。
男子シンクロみたいな「ダサかっこいい」感じじゃなくて、ストレートにカッコいいし。
思い出の1ページのBGMにジャズがかかるような、そんな人生を過ごすべし――あらためて決意したりして。
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