発売元 : ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
品番 : SICP-217 / 定価2,520円(消費税120円ふくむ)
マイケル・ムーア監督の映画、「華氏911」がアメリカで大注目されている。
いわく「『華氏911』を見て大統領選投票の参考にしたか?」という調査がマスコミでおこなわれているらしい。
こんな政治的な映画がこれだけの注目を集めること自体すごいことだが、本来、こうした役割をもつべきテレビはいったい何をやってるんだ、という気もする。
…というのは、前フリで。
「華氏911」自身が注目されることは意義深いし、ぼくも日本での公開を心待ちにしている。
しかし、ブッシュ批判、イラク戦争批判の流れ全体を見たときに、マイケル・ムーア一人がそれを代表しているかのように錯覚するのは正しくないと思う。
このグラミー賞アルバム「ホーム」を歌ったディクシー・チックスの女性3人も、「同じテキサス出身者として、ブッシュ大統領を恥ずかしいと思う」と発言した、勇気ある人たちの一部だ。
イラク戦争開戦を前後して、ディクシー・チックスの曲はアメリカでは「放送禁止」のような扱いをうけた。
カントリーといえば、アメリカの音楽ジャンルの中でもとくに保守的、政治的な意味で保守的というイメージがつよいが、大御所のウィリー・ネルソンもイラク戦争に批判的な歌を歌ったように、アメリカの普通の人びとの目線に立ったときに、「反戦」の気持ちが出てくるのも一つの真実だと思う。
事実、イラクで死んだアメリカ兵のうち半数近くは、アメリカの人口構成比でいえば30%以下の、小さな貧しい町の青年だった、というニュースを最近テレビでやっていた。
しかし、ディクシー・チックスが「オルタナティブ・カントリー」、カントリーの本流とは違った別の流れとして注目されたのはなんとも皮肉だ。
一般的に、オルタナティブというときには、単にマイナーだという意味ではなく、「それが本来の流れなのに」という意味合いがつよいのでもあるが。
実際、この「ホーム」は、アコースティックなバンド構成に3人のハモリが気持ちよく、自然な明るさやしみじみ感が実にいい。
白髪のおばあさんが広い庭の白いブランコで編み物でもしながら「あら、若いのにけっこういいじゃない?」なんて聞いてる姿が眼に浮かぶ(←偏見?)。
3曲目の「Travelin’ Soldier」では、これから戦争に行こうとバスに乗る兵士と、彼があまりに口数が少なくさびしそうだったので声をかける女性が登場する。
なんとも、純情であたたかいアメリカ人像じゃないか。当たり前だが、スタローンや、シュワルツェネッガーみたいなハリウッド映画の主人公だけがアメリカ人ではない。
メロディーとギターの軽いタッチのラインにのって物語のように歌はすすんでいく。
が、その兵士は「帰ってこなかった」ことを知ることになる。
アメリカの日常から生まれたディクシー・チックスの歌を聞きながら、アメリカの多くの人たちのなかにある「イラク戦争反対」の気持ちに共感してみたい。
マイケル・ムーアのような、アクと自己主張の強いおっさんだけ(失礼)が、「戦争反対のアメリカ人」ではないのだ。
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