著者 : 渡邊健一
出版 : ヤマハミュージックメディア / 定価 1,700 円(税別)
自分の音楽評を自己批判するわけではないけれど、ごく一般的に音楽をうんぬんするときにとても感覚的な表現がよくつかわれるという問題意識を感じている。
たとえば、絵画の「明るい絵」「暗い絵」というのは、明度や彩度という一定の科学的基準があるわけで。
しかし、音楽で「明るい曲」「暗い曲」といったときに、なぜそう感じるのかをきちんと説明できる人はどれぐらいいるんだろうか ?
そういう「音楽のしくみ」みたいなのをきちんと知りたいと思っていたのだが、この本は、そのへんのところを、和洋のポピュラー音楽を例に解説してくれていてとてもおもしろい。
音大なんかにいったりすると、その基本として「楽典」というのを習うらしい(いったことがないので知らないが)。
しかし、それは基本的にクラシック音楽の世界で脈々と受け継がれてきているものだけに、ロックなんかの「反体制」な世界ではそれをうんぬんするのは場違いのような雰囲気がある。
そこをあえて、ロックやフォークを題材にして楽典を解説しているところに、音楽理論の普遍性が感じられて納得できるようになっている。
しかし、この本は例え話がどうにも陳腐でひっかかる。
もともとテレビでやった内容を本にまとめたということなので、なんとなくわかる気もするのだが…。
男の主人公に対して、妻のような安定的な響きをもった和音と、愛人のような軽やかで華やかだけど安定感にかける和音…とか。
もうちょいまし、というか子どもでも納得いくような表現はないもんかな。
その辺のオヤジのエロ話につきあいつつ、その仕事の本質をみきわめようという意欲のある人にはおすすめ。
とはいえ、理論的な裏づけがあてはまるかあてはまらないかで、音楽のよしあしを判定できるわけじゃないところが、むずかしいところなんだな。
コメントを残す