「コーチ・カーター」

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コーチ・カーター スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

「コーチ・カーター」公式ホームページ

荒れた高校のバスケ部に就任したコーチが主人公という、ひさびさに「スポーツもの」。
たまたま新宿・高島屋のHMVにいったら、同じフロアのテアトルタイムズスクエアでロードショー中。
しかも、水曜日1,000円なんだってさ。(忘れないように書いておこう)

バスケものとしては、実際に選手として活躍している俳優がガツンガツンとダンクを決めたり、ガシッとスクリーンを決めたりと動きが本物っぽい。
さらに、劇中の選手たちとともに、観客にもある程度のフォーメーションを教えこむので、試合シーンのクオリティーは高いと思う。

しかし、この映画のもう一つの見せ場は「バスケをしない」エピソード。

バスケの試合では快進撃をつづけるチームだが、コーチ赴任時の部員たちとの「契約」とは裏腹に学業の成績は全然ダメ、ということがあきらかになる。
そこでコーチは、学業で挽回するまで、バスケの練習をする体育館を閉鎖、公式戦にも出ないことをきめて、図書館に部員を集めて補講をはじめる。
納得いかず文句をいう部員たちに、コーチは彼らが巣立っていく社会の現実をつきつける。
「統計によれば、この学校を卒業するのは50%、そのうち進学するのは2%。この街では青年の3人に1人は逮捕される。…家に帰って親兄弟の姿を見てこい。不満を感じたら、戻って勉強をしろ」、と。

結局コーチは、部活動はあくまで高校教育の一環ということを語るわけだが、彼らをとりまく社会は「バスケで勝ってるんだからいいじゃないか」という雰囲気に包まれ、体育館の閉鎖中止を迫る。
コーチは「部員たちとの契約が守れないなら、辞任する」と宣言するのだが…。

生徒の一人、いちばんワルかったのが、自分の人生や夢とむきあうなかで「自分の輝き、可能性がこわかった。暗部ではなく」と語るセリフがいい。
輝きや可能性にこだわると、自分に対するきびしさ、友人関係など、新しい不安がわきおこる。
そんな若き日の葛藤が凝縮されている一言だと感じた。
(このワルかったのが、チームに戻ってくるなり3ポイントをバスバス決めるあたりが、「スラムダンク」を思い出させて感動倍増。)

まさにこの夏の甲子園、出場が決まっていた部での喫煙と暴力があきらかとなり、出場を辞退するという事態が起こった。
監督は辞任するらしいが、校長の「名誉ある大会を汚し申し訳ありません」というコメントが気に入らない。
問題なのは、学校としての教育の姿勢だ、ということ。
結果として、絶妙にタイムリーな映画となってしまったのだ。

ただ、この映画の内容で完結しては展望がない。
部員たちは、逮捕されない3分の2、大学に進学する1%になっただけであって、その統計数字が表現している社会問題はそのままだ。
しかし、社会に不満をもっても、それと正面から対峙する姿勢がなければ、社会はかわらない。
この「内なる勝利」は貴重な一歩であると評価したい。


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