なんじゃこりゃ? ワールドカップ・バレー

先日、何気にテレビをつけると、「ワールドカップ・バレーボール2003」女子大会をやっていた。
しかし、最近のスポーツの国際大会のテレビ番組は退屈だ。
「日本ガンバレ、日本ガンバレ!!」――それは “解説” じゃあない。ただの「応援」だ。

さらに会場中の観客がもっている、あの紫色にキラキラ光る太さ10cm、長さ1メートルほどの物体は何だ ? 主催者の真意は ?
あんなもん会場で売るなよ。
選手は視覚的に気にならないんだろうか?

そして、会場内はどうやら日本代表を応援に来ている人たちがほとんどだ。
相手選手がファインプレーをしても、拍手どころかため息だ。

あのキラキラ + 鳴り物と、観客の構成の相乗効果――。
はっきりいってこれは「ホームの優位性」なんてもんじゃない、「環境ドーピング」といっていい。
あまりにアンフェアで、相手チームの気持ちを思うとスポーツとして正視できない。
鳴り物とアナウンサーの「応援」が耳につくので、とりあえずテレビのボリュームをしぼった。

ここまでえらそうに書いてきたが、ぼくはおよそバレーボールにはくわしくない。
だからこそ見ていたわけだが、せいぜい選手の名前を覚えたぐらいで、バレーボールの本質的なことについては何もえるところがなかった。
結局、この番組は、ぼくに次の放送を楽しみにさせるというせっかくのチャンスを無駄にした。

マーティー・キーナートさんというスポーツ解説者が「なぜ? なぜ? なぜ? の1週間」と題する「MSN ニュース – ジャーナル」の記事のなかで、このテレビ番組について、「意味のないイメージキャラクター…や、わけのわからないテーマ曲とマスコットに無駄遣いしたお金で、ほかの出場国を詳しく紹介したり、ワールドカップやオリンピックの歴史をたどったり、それなりの解説者を出演させたりしたほうが、はるかに有意義だ」と指摘している。
まったく同感だ。

先ほど「環境ドーピング」という表現をしたが、薬物によるドーピングが禁止されている理由は、「不公平だから」だけではない。
本質的には指定されている薬物が、副作用などで選手の肉体をむしばむ可能性があるから禁止されているのだ。

「日本に勝ってほしい。日本代表がオリンピックにいくかいかないかで、オリンピックの視聴率が違ってくるからだ」――などと考えているとすれば、大きな間違いだ。
冷静な視線での「観戦」よりも、熱狂のムードの中での「応援」の方が一時的には視聴率が稼げるかもしれない。
しかし、「応援」としてしかあの番組を見なかった人は、けっして日本以外のチームのバレーボールを見ないだろう。
結局、たとえ有力チーム同士のたたかいであっても、視聴率がとれない → 放送されないということになる。
これも、マーティーさんのいう「本物のドラマを見たい真のバレーボール・ファンに対する侮辱」と同じ発想だ。
やればやるほど日本のスポーツ界をむしばんでいく――そういう意味でも、ああいう放送やバックアップのしかたは「環境ドーピング」とよぶにふさわしい。

グチだけいっていてもはじまらないので、興味深く見ているスポーツ番組も紹介したい。
テレビ朝日系列の「NANDA!?」だ。
さまざまなスポーツの選手が、みずからの工夫を実践的・具体的に話すのがいい。
大リーグにいった投手の石井一久さんが、コントロールについて「あそこに投げようというねらいと、ボールが手を離れる点を線で結んで、その線上にボールを乗せるイメージ」と話していた。おぉー、わかりやすい。
この番組は結局、選手になった気で「観戦」できるようになる、「観戦」を楽しくする番組だ。
そしていうまでもなく「観戦」が楽しみになる。
こういうスポーツ番組、そしてナマのスポーツ報道をもっと充実させてほしい。

p.s. こうして文章にするにあたって、フジテレビの「ワールドカップ・バレーボール」のホームページを見た。驚いた。
トップの見出しが「全日本を応援して100万円を当てよう!」だ。
金でつらないと見てくれないと思っているなら、バレーボールに対する本当にひどい侮辱だ。
こういうのを「視聴率の買収」というのではないのか ?

p.p.s. 上記、「『ワールドカップ・バレーボールの』ホームページ」にリンクしてましたが、フジテレビのガイドラインに反するらしいことがわかったのではずしました。
「フジテレビ ワールドカップバレー」あたりで検索しちゃってください。


Comments

“なんじゃこりゃ? ワールドカップ・バレー” への1件のコメント

  1. いとうのアバター
    いとう

    なるほど。石井選手の説明は確かにわかりやすい。フジテレビはだめですね。またきます。

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