発売元 : ハピネット・ピクチャーズ
品番 : BIBJ-7170 / 標準小売価格 : 3,990円(消費税190円ふくむ)
最初、完全ノーマークだったわけですよ。
「常磐ハワイアンセンター」で「フラダンス」? ちょいダサから一歩踏み外したかなりダサで、適当に笑わせて終わりでしょ?――ってな印象で。
結局、2回行きました。
DVD が発売されたら、買いそうな勢いです。
何がいいって、労働賛歌なところ。
夢や希望や誇りをもって働くということに感動できるって大事だと思う。
蒼井優さん演じた主人公・谷川紀美子のお母さん。
自分も先立った夫も炭鉱で長年働いてきて、最初は娘のフラを「裸踊り」呼ばわりして反対しているが、やがて…
「自分はずっと、働くってことは暗いところで汗水流して歯をくいしばってやるもんだと思ってたけど、明るい光を浴びて笑顔でだれかに喜んでもらえる、娘たちの未来にはそんな働き方があってもいいんじゃないか」
ってセリフ。
いいねぇ。
「明るい光を浴びて笑顔でだれかに喜んでもらえる働き方」ってのは、何もダンスだけじゃなくて、働くこと一般にあてはまっていいと思う。
便利な機械や、化学製品や、医薬品が発明されている現在なら、昔――この映画が描いている1960年代なんかよりずっとずっと、働くってことは楽なはずなんじゃないだろうか?
同じことをするんでも、軽い力で、短時間に、できるはずなんだから。
それなのに、労働時間はどんどん長くなって、過労死したり、仕事の悩みで自殺したり…ほんとに歪んでると思う。
映画のパンフやらでは、李相日監督はあるイヤな世界から「抜け出したい」って気持ちを描いたって語られているけれど、映画のなかでは、結局閉じた世界が内部的に変化していった結果だということを明示している。
(父親がリストラされた友だちが街を出ていくところと、外からの借金取りがやっていくところ、その出入り口として川にかかる細い橋がつかわれていて、そこが唯一外界との接点であることを表現している)
そしてその変化と同時に、「だから炭鉱で働いてちゃダメ」とはせずに、同じように働くことのたくましさを表現しようとしている。
(しずちゃん演じる小百合が炭鉱の事故で父が死にかけているのに「踊らせてくれ」とうったえる場面、豊川悦司さん演じる谷川美紀子の兄が、妹のフラダンス・デビューの裏で晴れやかに炭鉱にむかうカット、いずれもダンスと炭鉱の仕事を同列視する表現)
…ま、2度もみるとちょっと説教がましいけど、とにかくいいから。
機会があったら見て!!
【追記】
高橋克実さん演じた、早苗(紀美子をフラに誘った友人)の父親のことで一言。
ぼくも一晩だけ高橋克実さんのことが嫌いになりました。
あの尋常でない暴れっぷりに。
でも、一晩「尋常でない」が気になって考えてみたら、高橋さん演じた炭鉱労働者の「何十年勤めて紙切れ一枚でおしまいか」のセリフにあるとおり、冷たいリストラこそ「尋常でない」のではないか、と。
あのリストラさえなければ早苗は殴られる必要も、フラをやめる必要もなかったわけで。
早苗の顔の傷は、リストラされた労働者が受けた心の傷を視覚的に表現した「言い換え」なんじゃないかなぁと思いますよ、ぼくは。
労働者へのあたたかいまなざしも↑の労働賛歌としてうけとめた次第です。
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