妻がジブリ・ファンなんで。
「手書きの絵にこだわった」ってのはなかなか成功して、ダイナミックですよ。
冒頭のたくさんのクラゲが海中に浮かぶようす。
「ファインディング・ニモ」で似たようなシーンがあるわけだけど、「ニモ」のCG では近くのものも遠くのものもリアルにクラゲの造型なわけですよ。
本作、「ポニョ」では、手前はしっかり「クラゲ」でも、中景から遠景はほぼ丸い形が描いてあるだけ。
大雑把っていえばそれまでなんだけど、逆に雪が降るような感じの想像を刺激する。
また、光の帯みたいな表現も、CG 的には「光っている一つひとつの粒子はなんなんだ?」といったアプローチになると思うが、「ポニョ」では「光の帯は光の帯だよ」といった感じに画面を黄色い固まりが覆う。
最近、テレビCMでやっている、海の波を巨大魚に例えるなど、リアルであることよりも、頭の中のイメージをそのままに描こうというのは逆に斬新な印象だ。
それから、ポニョと宗介をめぐる大人たちの恋愛観・結婚観も素直でいい感じ。
ポニョのお母さんが宗助に「(ポニョが)半魚人でもいいのですか?」と問いかけ、宗介が「人間のポニョも、半魚人のポニョも、おさかなのポニョも、みんな好きだよ」とこたえるシーン。
見かけではなく、丸ごとを愛そうという姿勢がえらい。
宗介のお母さんが宗助をかわいがるおばあちゃんたちに、「二人を見守ってあげてくださいね」と声をかけるシーン。
単に子どもだからということではなく結婚生活をなしとげる上では、二人の愛情を大前提としつつ、まわりの人の支えも欠かせない要素。
こういう、この夏休みに本作を見た子どもが、大人になって見返したときに「あ、こんなこともいってたのか」って思いそうなのが、映画の味わい深さをつくっていると思う。
映画全体として、お母さんが宗介を子ども扱いしないようにしていることにも通じると思うけど。
そういう意味では「子どもだまし」ではない。
しかし、そういったことも含めて、キャラクターの人間関係の説明が足りないんじゃないかとか、子ども向けなのか大人向けなのかわからない感じも無きにしも非ず。
それから蛇足なんだけど、最初の方のお母さんと宗介が家に帰ってくるシーンで、わざわざお母さんが荷物やら買い物袋を下に置いて玄関の鍵を開けて家に入るカットがあって「ここまでリアルにするのは、映画のテーマと矛盾するんじゃないかなぁ」と思っていた。
そしたら、シケのシーンではお母さんは鍵を開けずに玄関を開け、ポニョと宗介といっしょに家に飛び込む。
ほぅら、やっぱり…。
ということを映画の後に妻と話したら、最初の方のシーンでは「働くお母さんにはいろいろめんどくさいことがあるのよ」ということを感覚的に表現していて、後者はその事態の緊急性を感覚的に表現しているのであって、前者のリアルも結局は感覚的なものなのだ、と。
なるほど。
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