「自転車少年記」

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自転車少年記
著者 : 竹内真
出版社 : 新潮社 / 定価 : 1,995円(消費税95円ふくむ)

地味ぃな表紙で、「少年」記って割には、ボリュームもあってどうなんでしょ?
と、ぶっちゃけ本棚の肥やしになっていたわけだけど、なんとなくピンときて読みはじめた。

…いいっ!!

「少年」記といいつつ、小学校にも上がらない主人公がはじめて自転車に乗れた瞬間からはじまり、小学校、中学校、高校、大学と成長していき、ラストにむけては、その主人公の子どもが自転車に乗れるようになるようすを描く、なんとも壮大なストーリー。

自転車をある意味主役にしたっていうのがいい。
坂道を上がるつらさ、一方下り坂を重力にまかせて疾走する爽快感…きっと多くの読者にとって、自転車にまつわる感覚の描写には実体験と照らしあわせた共感がえられるはず。

そしてけっこういいと思ったのは、一人で考えるシーンが多いこと。
ぼくも高校、大学とけっこうな距離を自転車で通ったのだが、不思議と自転車に乗っている間はいろんなことを考えたものだった。
そして、それがまた不思議と記憶に残っていないのも事実。
その忘れかけた記憶を再生するように、自転車での思考過程を叙述してくれる。

最初は抵抗があったボリュームも読み終えてみれば、実に絶妙。
食い足りないことも、満腹すぎることもない。

そして、登場人物たちが、大人になってからも「少年」の心で自転車と友人たちに接しているようすが実にさわやか。
それは何かといわれれば、経済的な損得ぬきで、自分とか友だちとか夢とかにまじめに向きあう姿勢なんじゃないかと思う。
本書の登場人物たちと友だちになっていろんなことを話してみたい…いい大人にそんなことを思わせる稀有な小説として大絶賛。


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