壮大なる19世紀版ミュージック・ビデオ、ここにあり。
舞台にはあんまり足を運ばないので、この映画版が「オペラ座の怪人」初体験となったわけだが、音楽と映像の融合であるオペラの魅力にくわえ、映画的なカメラワーク & SFX がミックスされて、これは胸躍る体験だ。
オープニングの、豪華なスワロフスキーのシャンデリアがゆっくりとつりあげられつつ劇場に光をともしていく映像にかぶさって、あのメインテーマのオルガンが「ジャーーーーン!!」…このシーケンスから、もうすっかりメロメロ。
「サウンド・オブ・ミュージック」や「フラッシュダンス」など、ミュージカル映画といっても、基本的に普通のセリフまわしで進行して、ところどころで歌が入るというのが一般的。
しかしこの作品は、驚いたことに印象としてセリフの90%ぐらいが歌詞として進行していく。
つまり、セリフの掛け合いが音楽的なものとして昇華されているので、ストーリーと音楽が見事にシンクロしてあびせかけてくる感動。
これはなんとも表現しようのないものだ。
見事な役者を発掘したキャスティングも見所の一つ。
正直、これまでのつよい印象のなかった俳優陣を主役クラスに配したことで先入観なしで、役を味わうことができる。
メインの3人とも、「歌だけ吹き替え」でなく、自分で歌っているというのも驚き。
(これは、映画後に読んだパンフで知った。「どうせ吹き替えだろ?」と割り引いて聞いていたので激しく損した気分だ)
ちょっと主役・ファントム役のジェラルド・バトラーの歌いっぷりがロック的なのがひっかかる。
舞台となった19世紀に身をおいて考えれば、それは「前衛的な」歌い方といえなくはないが。
ヒロイン・クリスティーヌを演じたエミー・ロッサムは、パーフェクトといえるだろう。
歌、演技、そして天使を信じながら初恋に身を焦がす純情かつ魅惑的な雰囲気を見事に体現している。
しかも若干17歳!
…と、ずいぶん力が入ってしまった。
映画的には、メインの19世紀とそれを回想するその後の時代の行き来が冗長だった印象を受けるのと、もう一人の男・ラウルの人間像が弱いのが気になった。
まぁしかし、古典の印象をそのままたたえてリメイクしたという感じがつよく伝わってくる作品として、十分に「一見の価値あり」。
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