2005年度アカデミー賞で、作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞の4部門を獲得した話題作。
クリント・イーストウッド監督のアカデミー賞作品ということで、「許されざる者」に通じるほろ苦路線を期待して見に行った。
が、こりゃそうとうに重い。
これほどまでに、「目を背けたい現実」を描いた作品も少ないだろう。
ただ「目を背けたい」だけなら、恐怖映画やぼくの記憶のなかでは「ドッグ・ヴィル」なんかでもお目にかかれる。
しかし、これらは完全な虚構と割り切って――いわば自分の体は安全地帯においた上で――怖いもの見たさののぞき見として成立する。
今作「ミリオンダラー・ベイビー」では、現代社会を反映したリアリティーを壁にして、逃げ出すことを許さないギリギリの位置に観客を置く。
この映画にはセリフのある脇役がそれなりに多いが、ふり返ってみるとその最小限の脇役がそれぞれ重要なパーツとなっている。
孤独な老人と、その前に現れた女性ボクサーのあいだの家族的愛情というテーマで、その喜びも悲しみもが偶発的なストーリーであるなら、これだけの脇役は必要ない。
老人と女性ボクサーのキャラクターだけでなく、環境がリアルだから現実感がある。
「ああ、ありそうな話だ」と思わせるには、社会の現実から必然性をくみとらなくてはいけない。
これがアカデミー賞作品賞をとる映画か、とかみしめることのできる秀作だ。
「ミリオンダラー・ベイビー」
Comments
“「ミリオンダラー・ベイビー」” への1件のコメント
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おれんじは、安全地帯などを虚構しないはず。
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